疾病

症状

頭痛症

頭痛症

頭痛は250を超える様々な原因や疾患が関与しているといわれています。とりわけ生命にかかわる重篤な疾患(脳梗塞、脳出血、くも膜下出血、脳炎、脳腫瘍など)と、そうではない疾患(片頭痛、緊張性頭痛、神経痛など)を速やかに鑑別することが重要です。
医師による問診と診察、画像診断(X線検査、MRIやCT検査)、血液検査などを適宜駆使して診断がなされます。生命にかかわるものでは手術療法や集中治療による救命治療がなされます。その他の頭痛は薬物治療や理学療法などによる治療がなされます。片頭痛などは予防薬を用いた治療で日常生活の質の向上も得られるようになります。

 

めまい症

めまい症

めまいの原因としては中枢神経疾患(脳血管障害、脳や脊髄の炎症や脱髄性疾患など)、三半規管の異常など耳鼻科的な疾患(メニエール病など)、心臓・大血管の疾患(不整脈や血圧の異常など)が関与していると考えられています。
中枢神経系疾患の中には治療開始が遅れると重篤な後遺症を残すものがあり、速やかに治療に取り掛からなければならない場合があります。症状の強い場合は鎮静剤などを用いて症状の寛解を待たなければなりませんし、吐き気を伴う場合も多く、食事ができない状況では入院治療が必要となる場合があります。

 

ものわすれ(認知症)

ものわすれ(認知症)

一度獲得した知的能力が低下もしくは失われた状態を認知症と称します。原因としては、アルツハイマー病やレヴィ―小体病によるもの、脳卒中後に出現するものが良く知られていますが、その他水頭症、脳腫瘍、脳炎によるものなども注意を要します。記憶、学習、思考、計算、言語、見当識の障害が出現することが特徴ですが、時に行動の異常や精神症状の出現によって気づかれる場合もあります。治療法が確立されておらず、対応に難渋する場合が多いのですが、患者さんの人格の尊重、生活環境の充実を図ること、可能であれば薬物療法の試行などによる対応が望まれます。
また、治療可能な認知症を見落とさないことが肝要です。即ち、肝臓、腎臓、呼吸器の疾患、甲状腺や下垂体疾患、薬剤の副作用や中毒性疾患、ビタミンの欠乏など、原因疾患の治療で改善が望める二次性認知症は治療可能な認知症です。医師の診察を受けられ、脳画像診断、神経心理学的検査、血液検査等、総合的に診断を受けることが大切です。

 

けいれん、ふるえ(不随意運動)

筋肉やその支配神経、そして脳の異常などで出現します。片側の目の周りやほほの筋肉がぴくぴくするような比較的軽度のもの(眼瞼けいれん、片側顔面攣縮など)、手指を主体としたふるえ(本態性振戦、パーキンソン病、甲状腺や肝臓病などによるもの)、手足や体幹部に広く出現する重度のけいれん(てんかん発作)などがあります。
お薬による治療や原因疾患の治療で改善や寛解を得られることが多いのですが、外科的治療(手術療法)を必要とする場合もあります。

 

しびれ、麻痺

片側又は両側の顔や手足に出現することが多いと思われます。脳梗塞、脳出血、脳しゅよう、多発性硬化症、脊髄症など早急な対応を要する疾患や、首、腰の骨や椎間板の老化、異常で起こるものなど様々な原因があります。
診察により神経学的異常所見を見つけ、MRIやCT検査で病態の確認をすることで治療法(薬物治療、リハビリ治療、手術療法など)を決めることとなります。

病気の説明

脳梗塞(のうこうそく)

脳血管の一部が閉塞し、その先の領域の血流が途絶してしまうことが原因となります。比較的太い血管から細い血管まで幅広く起こりますが、太い血管では意識障害や一側手足の完全な麻痺など症状は重篤となる傾向にあります。細い血管の閉塞ではその部位により、顔や手足の感覚障害、手足の一部の脱力感、吐き気、めまい、嚥下障害、物が二重に見えるなど、症状は多彩です。
原因は心臓疾患、高血圧、糖尿病、高脂血症、大量の飲酒、喫煙などが挙げられます。
脳のMRI検査、心電図、血液検査などにより速やかに部位や病型の診断を行いその結果に則した治療を開始することが望まれます。また、後遺症対策として早期からのリハビリテーションは欠かせない治療法と考えられています。急性期以降は原因疾患の治療と再発予防の薬物治療が欠かせません。

 

一過性脳虚血発作(TIA)

上の脳梗塞の項で述べられているような症状が一時的に出現し、24時間以内に改善してしまう病態と考えられています。原因は心臓の血栓、頸動脈や大動脈の動脈硬化と言われています。
症状は一過性で消失するため軽い病気と考えられがちですが、多くの患者さんはその後48時間以内に脳梗塞に移行するリスクが高いため緊急対応が求められる疾患です。速やかに原因の確定をし、脳梗塞への移行を予防する対策を要します。

脳出血

脳血管の破綻により脳内に血腫と呼ばれる血の塊を形成する病気です。血腫が小さいときはほとんど無症状の場合もありますが、意識障害、めまい、吐き気、頭痛、一側の手足の麻痺など重篤な場合は生命にかかわるものもあります。症状の出現は脳こうそくと似ているので、MRIやCT検査によって確定診断が必要です。原因は主に高血圧ですが、脳血管の異常や奇形によるものもあります。
血腫の大きさや患者さんの年齢、状態により治療法が選択されます。内科的にお薬の点滴治療を施行する場合、または脳外科的に積極的な血腫除去術が施行される場合があります。
後遺症対策など早期からのリハビリテーションを要することは脳こうそくの場合と同様です。

くも膜下出血

脳の表面と脳を覆うくも膜の間に出血を生ずる病気です。原因の多くは脳動脈に生じた動脈瘤と呼ばれるこぶの部分からの出血ですが、その他脳血管の奇形や頭部の外傷によるものも知られています。
典型的な症状は、これまでに経験したことのない頭痛で、吐き気や嘔吐を伴う場合が多いようです。
重篤な場合は意識消失と心肺停止をきたし、短時間で死に至る場合がある一方、軽症例は発症後に頭痛を主訴に歩いて病院を受診する患者さんもおられます。治療は再出血を予防するため、開頭手術が原則ですが最近は開頭せずに血管内治療が選択される例もあります。

慢性硬膜下血腫

転倒や頭部の外傷により頭蓋骨と脳の間(硬膜下腔)に緩徐に血液がたまっていく病気で、1~2か月後に血液が脳を圧迫して様々な症状を呈します。比較的高齢者に多くみられ片側の手足の麻痺、頭痛、吐き気、意識障害などで気づかれることが多いようです。
時に物忘れや異常行動など認知症様の症状を呈することもあります。診断は頭部のMRIやCT検査によってなされます。症状が軽微で出血量も少なければ自然治癒も望めます。点滴などお薬を用いた内科的治療を行う場合や、血腫を吸引除去する外科治療がなされることが多い疾患です。

顔面神経麻痺

通常片側の瞼が閉じない、口角部から水や食べ物がこぼれる、顔の半分が腫れぼったい、耳の周囲が痛むなどの症状で気づかれます。原因の特定できないものがありますが、ウィルス感染、糖尿病、腫瘍、脳梗塞などによるものが知られています。
初期のうちに診断を確定し、治療を受けることが後遺症を残さないために必要です。ステロイドホルモンや抗ウィルス薬での治療が行われますが、原因となった疾患の治療も同時に進められなければなりません。

こむらがえり

発症のきっかけは運動中やそのあと、就寝中や安静時に筋肉に負担をかけた時、寝返りをした時などに出現することが多いといわれています。
一方、末梢神経や脳の疾患、筋肉や腰の疾患、内科的疾患の一症状として出現する場合もあります。原因となっている疾患の治療と合わせて漢方薬や抗けいれん薬などお薬を用いて対症的治療を施行することが多い疾患です。

三叉神経痛(さんさしんけいつう)

主に片側の頬部(ほほ)、口の周囲、鼻翼(小鼻)の外側に出現する瞬間的な痛みが特徴です。洗顔、歯磨き、髭剃り、食事をきっかけに誘発されることが多いといわれています。
たいてい1秒以内から2分程度で寛解しますが、繰り返すことがあります。明らかな原因がとらえられないケースではお薬で痛みを取る治療を優先します。原因疾患が明らかな場合はその治療が考慮されます。脳外科での手術療法を必要とする難治例も少ないながら認められます。

パーキンソン病

安静時の手指のふるえ、歩きづらさ、動作が遅くなる、手足を含め体の筋肉が固くなる、顔の表情が乏しくなるなどの症状で気づかれます。緩徐進行性の病気で現時点では根治はできませんが、お薬による治療の有効性が認められています。
脳内の特定の部位で神経細胞死が進み、ドパミンと呼ばれる神経伝達物質が枯渇してしまうことが原因と考えられています。進行期ではお薬の効果が出づらくなる場合があり、手術療法(脳凝固術や脳電気刺激術)が選択される場合もあります。厚生労働省指定の特定疾患(難病)に指定されており、公的医療補助の対象疾患です。

アルツハイマー病

現在日本人の認知症の約6割がアルツハイマー病といわれており、国を挙げてその対策が急がれています。しかしながら診断および治療法は完全には確立されておらず、早期診断の遅れが問題となっています。
初期には物忘れ程度の症状で、周囲の人々の見守りにて日常生活が送れますが、徐々に進行し行動や感情の障害をきたすようになります。それまで使えていた道具がうまく使えない、近所の人とトラブルを起こす、迷子になる、仕事や家事の段取りができなくなる、怒りっぽくなる、人にものを取られたなどと妄想が出現するなど日常生活が立ち行かなくなります。
原因は大脳皮質(特に側頭葉と呼ばれる部分)の神経細胞が広範囲に障害され脱落、死滅するためと考えられていますが、その機序は解明途中です。したがって治療法は確立していないのが現状です。患者さんには支持的、愛護的態度で接することが大切です。脳機能を維持し、行動や感情の異常症状を予防するための、ケアを中心とした生活環境整備が大切と考えられています。また、効果は限定的ですが、お薬による治療も選択できます。認知機能障害の進行を遅らせる効果と行動や感情の異常に効果を示す場合があります。

低髄液圧症候群(脳脊髄液減少症)

頭痛が主症状ですが、さらに、首の痛み、耳鳴り、吐き気、光過敏などを伴うことがあります。座る、立ち上がるなどの姿勢で頭痛が出現、寝ると症状が改善する特徴があります。
交通事故などの外傷、ストレッチ体操、時には咳にて発症する場合も報告されていますが、特定できない例もあります。原因は脊髄全体を包んでいる硬膜と呼ばれる膜が破れて中にある脳脊髄液が外側に漏れだすためと考えられています。診断は特徴的な体位性の頭痛症状と、それを裏付ける脳脊髄MRI検査やシンチグラフィー検査所見等によってなされます。
治療法としては保存的治療が原則です。即ち、安静臥床そして一日1~2リットルの点滴治療です。1~4週間で症状の改善が得られます。難治性の場合は硬膜外自己血注入療法と呼ばれる処置が選択されることもあります。

生活習慣病

高血圧症、糖尿病、脂質異常症は、生活習慣病と呼ばれ、様々な疾患の原因となることが知られております。脳梗塞や脳出血など脳卒中の主要な原因であると同時に、近年物忘れなど認知症の原因にもなっていると考えられるようになりました。これらの生活習慣病を制圧することにより脳卒中や認知症を予防することが可能となります。従ってその治療と管理がとりわけ重視されるようになっています。

高血圧症

血圧は患者さんの年齢や合併症等によりその基準値が異なります。測定場所や時間帯によっても値は変わりますので医療機関で患者さんごとの基準値を決定していただくことが必要です。心臓、肺、腎臓、副腎、甲状腺などに原因がある場合はその治療が優先されますが、原因が特定されない高血圧は塩分制限や食事量の適正化、運動などと合わせ、降圧剤による治療が必要です。

糖尿病

本疾病は膵臓から分泌されるインスリンの作用低下を主体とする病気で、具体的には空腹時血糖126 mg/dl以上あるいは随時血糖200 mg/dl 以上、HbA₁c 6.5%以上と定義されています。これらの値を超えないことが理想的と捉えられがちですが、近年低血糖による危険性を勘案し年齢や合併症等により至的な血糖値を患者さんごとに設定するようになりました。医療機関にて基準値を設定していただき治療を受けることが肝要です。食餌療法、運動療法、薬物療法(注射剤や内服薬)を根気よく続けることが求められます。

脂質異常症

本疾患はLDL-コレステロール、HDL-コレステロール、中性脂肪(トリグリセライド)の値によって診断されます。男女差、年齢、合併症の有無によって適宜目標値がもうけてあります。LDL-コレステロールは悪玉コレステロールと呼ばれ、通常160 mg/dl未満が目標値とされています。しかしながら喫煙者や脳梗塞、高血圧、心臓病、慢性の腎臓病などを合併した患者さんの場合140 mg/dl未満や100 mg/dl未満を目標とする場合もあります。高齢の患者さん(75歳以上)の場合は個々の病態に応じて目標値を設定することとされています。数値のみにとらわれず、食事内容や運動療法等と合わせ総合的に判断し、薬物療法の適応などを考えることが重要です。

 

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